読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第7章 取引費用理論(TCE)

前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第6章 情報の経済学2(エージェンシー理論) の続きを読んでいきます。

本編に入る前に、章中に『機会主義( opportunism )』というワードが出てきて、 opportunity 、機会は分かるんですけど、機会主義?なんだろう?思ったところでした。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E5%92%8C%E8%A6%8B%E4%B8%BB%E7%BE%A9

Wikipedia によると・・・

日和見主義(ひよりみしゅぎ)とは、「ある定まった考えによるものではなく、形勢を見て有利な側方に追従しよう」という考え方のことである。日和見とは、江戸時代頃の日本の天気観察のことである。

日和、つまり天気を観て行動を決めるかのようであるのでこの名がついた。普通、政治的な場で相手を侮辱する時に使う言葉である。機会主義(きかいしゅぎ)、投機主義(とうきしゅぎ)、オポチュニズム(Opportunism)とも言う。

へー知らんかった。おそらくだけど、長期的な相手の関係性とか考えずに、短期的に自分の利益だけを見て行動する、みたいな意味に捉えればいいのかな。

さて今回も1章分を読んでいきます。 「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。

『第7章 取引費用理論(TCE)』の概要

第7章はまとめるとこんな感じの内容でした。

  • ホールドアップ問題 とは、取引の特殊性などの高まりから、取引時に想定していなかった問題が数多く出てきてしまう問題のこと
    • ホールドアップ問題が起きる3つの条件(と1つの前提)がある
      • 不測事態の予見困難性
      • 取引の複雑性
      • 資産特殊性
      • 機会主義的な行動を取ることを前提として考える(経済学的な視点から)
  • TCE (Transaction Cost Economics) 、取引費用理論 とは、ホールドアップ問題を解消する方法、企業として 内製するの?外注するの? を考える軸となる

ホールドアップ問題とは

すごく分かりやすい例として、 IT のアウトソーシングの例が載っています。

  • システムを更新したいときに前回よりもはるかに高い金額を要求される
  • そのベンダーによってカスタマイズされているため、頼まざるを得ない

この辺の話はあるあるですねー。属人化の闇ですね。

この辺を一般的にした話が以下の3条件です。

  • 不測事態の予見困難性 、ビジネスの将来が見通しにくい
  • 取引の複雑性 、取り扱っている技術が新しいなどの理由で取引自体に複雑さがある
  • 資産特殊性 、取引相手と取引し続けることで、もう一方の企業にノウハウやリソースが蓄積される

最後の資産特殊性については、さらに掘り下げられて種類が挙げられていますが、 例えば特定の顧客のための特殊な機械設備に設備投資したり、メーカーにとって特別に必要な知識・ノウハウ・経験を持った技術者などが、 物的資産・人的資産の特殊性だよ、と紹介されています。

あるあるですねー。その企業を相手にビジネスして特化したスキルで対応し続けるんですけど、やめたら他では役に立たないので、 提供する方もやめるにやめられない、みたいな話は実際によく耳にします。

ホールドアップ問題を解消するには?

上記3条件が高まっているときは、外注から内製に切り替える、つまりは買収するなどして内部化してしまうことで、 取引コストを下げられるよね、という話が紹介されています。

この辺を理論化したものが TCE (Transaction Cost Economics) 、取引費用理論 らしいので、続けてみていきます。

TCE (取引費用理論)とは?

TCE (Transaction Cost Economics) 、取引費用理論 は、ホールドアップ問題を説明する理論になっています。

またさらに、そもそも企業ってなんなの?ってところまで話が踏み込んでます。 取引コスト という概念を導入することで、市場(取引が行われる、いわゆる外注)の対局にいるのが企業(取引が行われない、いわゆる内製化)であると位置付けられていて、 取引コストの大きさが企業の範囲を決める(どこまで内製し、どこから先を外注にするか)、ということが TCE によって説明されています。

ハイブリッド・ガバナンスについて

現実には、市場(外注などの取引)と企業(内製化)の2択だけではなく、合弁会社や共同開発など、市場に近いものから企業に近いものまでの濃淡が存在していて、 本書ではその様々な取引ガバナンスの関係性が2軸のグラフで表示されています。

一般に 市場から企業、つまりは取引コストを下げようとすればするほど、相手をコントロールする必要が出てくる ので、 取引コスト以外の部分(投資費用や販管費など)でコストがかかってきてしまい、 これらはトレードオフの関係にあるとされています。

このため、企業はそのトレードオフの中で自社取引に最適なガバナンスを見つける必要があるよ、とのことです。

内部化に寄せた方が良さげな例

ここでの具体事例として、国際化戦略について触れられていたのですが、

  • 日本企業がこれから進出していくのはおそらく新興市場になるだろうが、取引コストが上昇(司法がまだ整備されてないなど)しがち
  • ホールドアップ問題が深刻化することを予め想定しておいた方がいいよ
  • 取引コストを内部化する進出モードも考えてもいいんじゃないの

みたいな形で紹介されています。海外に打って出たい!と考えている人は参考にするといいんじゃないでしょうか。

外注に寄せた方が良さげな例

世界的にみると、 IT によって取引コストが下がっているので、 内製で全部やらなくてもいいんじゃない?みたいな話も合わせて紹介されています。

ソニーの例が紹介されていて、 『ソニーのエンタメ事業はむしろ独立した上場会社になって、ソニーの他事業部門と 市場ベースで取引してしまった方が効率がいい 』 というロジックなんだそうで。なるほど。

まとめ

  • TCE (取引費用理論)は内製か外注かの思考の軸になりうる
  • ハイブリッド・ガバナンスのトレードオフを理解するの大事、自社にあった取引ガバナンスを考える

たしかに IT によって取引コストが下がってくる方向にきてるのは間違いないので、 以前よりも会社で全部やらなくていいんじゃない?という雰囲気にもなってきつつありますね。

ちなみに上では触れてませんでしたが、市場・企業の軸の企業のことを hierarchy と呼んでいて、 日本語訳としてハイラーキーと書籍上では紹介されていたのですが、一般にはヒエラルキーと呼ばれるやつですね。(書籍にも断りが入れてあった)

ハイラーキーの方が発音的に近しいと思われるんですけど、こういうのみるたびに最初にカタカナにした人、ちゃんと考えて変換しておいて欲しいって思っちゃう派ですね・・・。

参考 URL

もし記事内に誤りなどございましたら、 @girigiribauer までご一報いただけると助かります。