前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第25章 「弱いつながりの強さ」理論 の続きを読んでいきます。
WBS (ワールドビジネスサテライト)という番組経由で筆者を知ったので、 元々別のところで連載されたものを書籍としてまとめられた、あたりの経緯を全然知らなかったのですが、 元々は DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューというところで連載されていたものらしいです。
最近見つけたのですが、連載から書籍化(手前?)あたりの経緯がこちらにまとめられてました。
https://www.dhbr.net/articles/-/5318
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューで好評連載中の「世界標準の経営理論」。3年8ヵ月、計44回にわたる連載が、4月10日発売号でついに最終回を迎えた。連載はいかにして始まったのか、そして連載関係者らの裏話まで。著者の入山章栄氏、連載開始時の編集長岩佐文夫氏、連載を支えてきた永山晋氏の3名で、その裏側を語り尽くす。
へーーー。3年8か月も連載してたんですか、すごい・・・。
編集の人が経営に関してど素人っていうのが、逆にど素人の視点でも読めるようになっているという一定の保証にもなっているのかもですね。 僕も完全にど素人と言っていいレベルなんですけど、さくさく読めていてありがたいです。
今日も1章分です!
「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。
第26章はまとめるとこんな感じの内容でした。
半分程度は、前章の「弱いつながりの強さ」理論、 SWT 理論と同じ(異なる視点から同じものを述べた感じ)なんですが、今回は自分視点でソーシャルネットワークを見たときに、 どういったケースで得をするのか?損をするのか?を理論的にまとめたものが、今回のストラクチャル・ホール理論 です。
A <-> C
と C <-> B
がそれぞれつながっているとき、Cの立ち位置にいる人の方が、有利になるよという理由が2つ紹介されています。
これを多人数に拡張したうえで、 高密度なネットワーク同士をつなぐような立ち位置にいる人、 クラスター同士のすき間がある状態のことを、ストラクチャル・ホール(SH)といい、SHが豊かな人ほどブローカレッジの効果により得をする 、とされています。
メーカーと小売りの例として紹介されていましたが、 そもそもSH理論は商売の基本で、問屋・卸売業はこのSHにおけるブローカレッジで利益を得ている人たち、つまりはブローカーとして商売してきたんだよ、と事例交えて紹介されています。
東インド会社という世界初の株式会社も、もっと遡ってシルクロードを往復する商人も、西洋と東洋というクラスター同士をつないできて商売してきたと筆者は述べてます。 なるほど、確かに。
この辺の時代であれば連絡手段は全然ないですし、それを結び付けてきた商人くらいしかお互いがやりとりしないですよね。 西洋と東洋というでっかいクラスターをまたがってやりとりしてきたのなら、すごく優位に動けてたのもうなずけます。
理論とはいえ、効果的に活かすには条件があるよ、でもまだその条件はコンセンサスが取れてないよ、と筆者視点で紹介されていましたが、 とはいえ重要なポイントとして2点紹介されてます。
いやー、こういうコンセンサスがまだ固まっていないといいつつも、そこを筆者視点でちゃんと補足してくれてるのありがたい・・・。
研究が現在も進行中、と断ってありつつも、異なるタイプのプレーヤー(クラスター)間の結節点となることが重要だとされています。
理由が2点。
前者はともかく、後者のをここだけ見ると意外な感じです。
後者の同質なプレーヤー間の結節点でのやりとりというのは、つまりは競合相手とのやりとりに相当するので、 それを利用して自分だけが得をすると、むしろ周囲との信頼関係を損ない、自らのパフォーマンスも落ちちゃった、的な研究が紹介されてました。なるほど。
これは一概にどちらが良い、とは言えず、それぞれ支持する研究結果が出ているようです。興味深いです。
後者は IT などを活用して、異なるクラスター同士に属していたプレーヤー同士が、直接つながることによるメリットも該当しますし、 これまでつながっていなかった人同士をつなげたうえで価値創造する、みたいな話も該当するのですが、 立ち位置によっては損をするケースもあるので、維持するのか埋めるのかはじっくり考える必要があるよ、と紹介されています。
ただ、 SH を維持するにせよ、埋めるにせよ、まず SH を生み出さないことには選ぶこともできないので、 SH を作り出していくことはどちらにしろ重要だよ、とされています。確かに。
筆者からは、現在の経営学は SH がもたらす効果に焦点が当たりすぎで、 SH が生み出す人の研究成果が十分でない、と触れられていますが、 その中でも筆者が重要だと考える視点が最後に紹介されています。
あー、やっぱり無かったとしてもここまで踏み込んでくれてるの、好感持てますね・・・。
バウンダリー・スパナー という概念が紹介されていて、 組織の境界で行動する人々で、組織に必要なタスクを遂行し、境界を超えて組織内部と外部の要素をつなげる役割だ、と紹介されてます。
さらに別の直感的な説明として、 企業と企業の境界を超えて、離れた別のクラスターの人々とつながること とも紹介されてます。
うーん・・・、確かに直感的ではあるんですけど、じゃあバウンダリー・スパナーの役割が出来るようになるにはどうしたらいいの・・・?って疑問も一定解消されない感じですね・・・。
具体例がいくつか紹介されているので、箇条書きでまとめてみます。
なんだかこうやって具体例書いてみると、第13章の知の探索を全力でやっていこうぜ、って話にもかぶる部分なのかなって感じがします。
前者は何となく感覚で理解はしてたんですけど、このように理論としてまとめてくれつつ、ワードも提供してくれるとすごくすっきりしますね。 後者は、これを考えることこそがビジネスって感じがするので、思考の軸としていけたら良いかなって思いました。
たぶんこの先、異なるクラスター間の間でやりとりできた実感が持てたとき、 「あっ自分今ストラクチャル・ホールになってる・・・!」って心の中で思うようになることでしょうw
結局のところ、どんどん diff を取りに行ったらいいという僕の理解は、あながち間違いではないのかもしれません・・・。
この記事は書かれてから1年以上が経過しており、最新の情報とは異なる可能性があります