読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第18章 リーダーシップの理論
この記事は書かれてから1年以上が経過しており、最新の情報とは異なる可能性があります
前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第17章 ダイナミック・ケイパビリティ理論 の続きを読んでいきます。
今回、リーダーシップの理論なんですけど、なんだか段々と 経営って何なのかがよく分からなくなってきました・・・。
マクロ・ミクロの話で言うと、マクロが経済で、ミクロが経営だとばかり思ってたんですけど、 なんだか全然そういうところに収まってない感じがあるというか、 人の行動の仕組みを掘り下げたり、ルーティンの話になったりと、もう何が何やらですw
ちなみに今回から第3部、ミクロ心理学のターンに入ります。 このミクロ心理学、どうやら筆者の造語だったらしく、第2部のマクロ心理学との対比のために考えられたようで、 要するに個人にフォーカスした話になっていくよ、ということのようです。
リーダーシップ、モチベーション、意思決定、感情の話と、この第3部は盛り沢山のようで楽しみですね。
「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。
『第18章 リーダーシップの理論』の概要
第18章はまとめるとこんな感じの内容でした。
- リーダーシップの定義は人それぞれ、時代によっても異なるが、一つ挙げるとすれば 他者に変化をもたらす ことを指す
- 経営学のリーダーシップ研究、大まかに 3つの古典的なもの、2つの現在の研究の中心になっているもの がある
- 古典的なもの3つ
- リーダーの個性によるもの、リーダーを務める人はユニークな資質・人格がある
- リーダーの行動によるもの、部下に対する行動スタイルの違いが組織に影響する的な話
- 個性と行動が特定の条件によって有効となるもの、調べていくうちに条件が非常に限定的になって(普遍的でない)、理論として使いづらくなっちゃった
- 最近(1980年代〜)のやつ2つ
- リーダーが部下をえこひいきする話、全員をひいき出来るリーダーこそが最強だ説
- 管理型(アメとムチ)で部下に向き合うリーダーシップと、ビジョンと啓蒙によって部下に向き合うリーダーシップに区分する話
- 前者を トランザクショナル・リーダーシップ(TSL) 、後者を トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL) と呼ぶ
- 全く別視点からのリーダーシップ、グループの複数の人間、あるいは全員がリーダーシップを執る考え方、 シェアード・リーダーシップ(SL)
- リーダーシップの最強のパターンは トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)とシェアード・リーダーシップ(SL)の掛け合わせ
リーダーシップの定義について
リーダーシップ本って世の中にたくさん出てますし、様々な研究もされているしで、一概に定義できないよ、と触れていつつも、 ここでは CEO 、キャプテンのような役職のこととは限らず、あくまで心理的に『 他者に変化をもたらす 』ことを指すよ、と紹介されています。
その上で、経営学のリーダーシップ研究の歴史をたどると、大きく5つに分類されるとあって、 そのうち3つは古典的なものなので、本章でも簡潔に、とあるので、ここでは丸ごとすっ飛ばしてしまいます。
トランザクショナル・リーダーシップ(TSL)とトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)について
5つに分類したもののうち、一番最後に紹介されているものだけ、ここでは触れていきたいと思います。
管理型(アメとムチ)で部下に向き合うリーダーシップのことを、ここでは トランザクショナル・リーダーシップ(TSL) と呼び、 ビジョンと啓蒙によって部下に向き合うリーダーシップのことを、ここでは トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL) と呼んでいます。
リーダーシップ研究者でこの区分けを知らないものはいないぞ?とされていて、 さらにこれらは相矛盾するものではなく、補完関係にあるとされています。(1人のリーダーは TSL と TFL を同時に持ちうる)
ちなみにこの辺の話は、ダニエル・ピンクさんのモチベーション3.0という書籍を以前から読んでいて、 だいぶ近しい話を知ってたりはしていたので、すんなり理解しています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4062144492/
(この書籍内では、モチベーション2.0は外敵な要因によるもの、モチベーション3.0は内的な要因によるもの、中から湧き出るようなやる気、という分類がされてるやつで、前者が TSL 、後者が TFL に相当するかと思います)
ではそれぞれ見ていきます。
トランザクショナル・リーダーシップ(TSL)
アメとムチの話です。特性が2つあるよとされています。
- 状況に応じた報酬
- 例外的な管理
最初の状況に応じた報酬というのはは概ね分かりますが、例外的な管理とはどういうことかというと、 成果を上げてさえいれば(それがどんなに古いやり方であっても)直接的な指示はせずに続けさせること、とあります。 つまりは厳格に状況に応じた報酬っていうのを適用するために、こまけえことはいいんだよ、みたいにしろってことなんでしょうか?
部下からの期待に適切に報いることで、信頼・尊敬の関係を醸成する好循環プロセスを築き、部下や組織の変化を促すのが TSL だとここでは紹介されています。
トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)
ビジョンと啓蒙の話です。3つ資質があるよとされています。
- カリスマ
- ビジョンなどを部下に伝えることで、その組織で働くプライド、忠誠心、経緯を植え付ける
- 知的刺激
- 知的好奇心を刺激する、新しい視点で考えることを推奨する
- 個人重視
- コーチングや教育を行い、学習による成長を重視する
TSL と比べて TFL には、啓蒙・刺激などをすることで、自らの意思でリーダーに追従させるところが異なるところだよ、と紹介されてます。
個人的には後者の方が好きですね。 やることが明らかで脳をあまり活用しないような作業については、 TSL の考え方を使うこともありますが、 知的作業については概ね TFL のような考え方を用いた方がいいなあという印象です。
シェアード・リーダーシップ(SL)
これまでは誰か1人がリーダーシップを執るという垂直型だったのですが、 シェアード・リーダーシップ(SL)は水平型のリーダーシップだよと紹介されていて、 それぞれのメンバーが時にリーダーのように振舞うことで、以下のメリットがあるよとされています。
- 全員がリーダーとして動くことで、当事者意識を持てる
- これは自分のグループであるというアイデンティティを持ちやすくなり、知の交換が積極的に行われる
SL は知識ビジネス産業において極めて重要だ、とも紹介されてます。なるほど。
リーダーシップの最強のパターンは SL x TFL
最後に トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)とシェアード・リーダーシップ(SL)の掛け合わせ が最強だ、と紹介されてます。
つまり、この SL で全員がリーダーとして振る舞いつつ、さっきの TFL でビジョンを持つように動くことがいいんじゃない?と触れられています。 本書内でも、今後はより様々な産業が知識産業化していき、 SL x TFL の果たす役割は高まっていくはずだ、とまとめられてます。
個人的にはコミュニティで知の共有を行うのなら、まさにこの構成が一番向いてるんじゃないかなーとは思っていたりしていて、 それがなんだか言語化できてすっきりしている感はあります。
まとめ
- 自分のビジョンを明確にしつつ、啓蒙しあってリーダーシップを発揮していくのが現代のリーダーシップ理論
- アメとムチ、ビジョンと啓蒙は使い分けていくの大事
すごいなー、経営学って何でもやるんだなーって感想です・・・。
途中少し触れたんですけど、アメとムチ的な話はモチベーション3.0って本を読んで非常に感銘を受けたやつなので、 その辺が別の視点から改めて説明されていたので、なんだかとてもすっきりした気分です。 モチベーションに関する内容は、この第3部の別の章にて詳しく掘り下げられることだと思います。楽しみです。
この記事は書かれてから1年以上が経過しており、最新の情報とは異なる可能性があります