読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第20章 認知バイアスの理論
この記事は書かれてから1年以上が経過しており、最新の情報とは異なる可能性があります
前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第19章 モチベーションの理論 の続きを読んでいきます。
これまで第2部、第3部と、人の認知には限界があるという前提であれこれ話を見てきたので、 その視点の話はだいぶ慣れてきたというか、 それを前提にしていなかった経済学視点の話ってけっこう使えるの限定的なのかな?って気がしてきました。
たぶんこの先の章で、それがさらに人間は合理的に動くとは限らない、みたいなルールが増えてカオスになっていくんですよねw
今回も1章ずつ読んでいきます。 「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。
『第20章 認知バイアスの理論』の概要
第20章はまとめるとこんな感じの内容でした。
- 人には認知の限界があり、情報すべてを収集できないし、留めた情報でもすべてを引き出せないという 認知バイアス が存在する
- 個人の認知バイアスにはどんなものがあるか
- 特に認知的な評価プロセス( パフォーマンス・アプレイザル )4つ
- ハロー効果( halo effect ) 、何かに優れていると、他もすごいに違いないと思ってしまう
- 利用可能性バイアス( availability heuristics ) 、簡単に思いつきやすい情報を優先的に引き出して頼ってしまう
- 対応バイアス( correspondence bias ) 、当事者の人柄、資質のせいにしてしまう
- 代表性バイアス( representativeness heuristics ) 、確率を過大評価してしまう
- 特に認知的な評価プロセス( パフォーマンス・アプレイザル )4つ
- 組織の認知バイアスにはどんなものがあるか
- 社会アイデンティティ理論 、出身や所属についての認知バイアス
- 社会分類理論 、組織の中で無意識に他者をグルーピングしてしまう、同じグループに好意的な印象を抱いてしまう( イングループ・バイアス )
- 認知バイアスの乗り越え方
- アテンション・ベースト・ビュー( Attension-Based View, ABV ) 、個人の認知バイアスを組織でカバーする
- マインドフルネスを高めることで、バイアスなく周囲を見通せるようになる
認知バイアスについて
人には認知の限界があるよ、という話が続いているので、 だいたいどういうことかは予想がつくのですが、以下のあたりに認知バイアスが存在するよ、とされています。
- 情報収集
- 引き出し
- 評価
また、認知バイアスについては心理学において膨大な数の理論が打ち立てられているとあるので、 その辺とことん掘り下げたいなら、専門書読むといいよ、とも書いてあります。
さすがに素人にいきなり専門書は難易度高いので、認知バイアスについて専門書を紹介してありそうな一般書を読むくらいなら、 やってみてもいいのかもしれないですね。
個人の認知バイアス、こんなのあるよ
経営学で特に重視されているのは、認知的な評価プロセスだとされています。 これを パフォーマンス・アプレイザル と呼ぶそうです。
パフォーマンス・アプレイザルの代表的なものが4つほど紹介されているので見てみます。
- ハロー効果( halo effect )
- 利用可能性バイアス( availability heuristics )
- 対応バイアス( correspondence bias )
- 代表性バイアス( representativeness heuristics )
ちなみに他にも色々あるよ、と注釈にもありました。
ハロー効果( halo effect )
何かに優れていると、他もすごいに違いないと思ってしまうことをハロー効果と呼ぶらしいです。
- スポーツができる => 人格面も優れているに違いない
- 英語が上手に喋れる => 他分野でも頭が良いに違いない
みたいなやつですね。
これはあるあるですねー。
利用可能性バイアス( availability heuristics )
簡単に思いつきやすい情報を優先的に引き出して頼ってしまうことを、利用可能性バイアスと呼ぶそうです。
- 想起容易性
- 例: 大きな事件、印象に残りやすいテレビコマーシャルなど
- 検索容易性
- 例: とりあえずいつもの買っておけば問題ない、判断してしまう
- 具体性
- 例: あの人が言うなら間違いない
対応バイアス( correspondence bias )
これは、例えば現場で起きた問題を、何かと『担当者の責任論』にしたがる傾向のことを言うそうです。 対応バイアスといいます。
代表性バイアス( representativeness heuristics )
確率を過大評価してしまうことを代表制バイアスと呼ぶそうです。
関西人の例が紹介されていたものの、いまいちピンときてなかったり・・・。 とはいえ、確率に関して人間の認知バイアスは多分にあることは、頭では理解してるつもりではいます。
組織の認知バイアス、こんなのあるよ
上の個人の認知バイアスに対して、組織に対する認知バイアスもあるよ、と紹介されています。
社会アイデンティティ理論
組織への帰属意識からくる認知バイアスのことのようです。
企業買収の例が載ってます。 新興国の企業が先進国の企業を買収した場合、平均よりも16%も高いプレミアムを払う、という傾向があるんだそうです。 これを社会アイデンティティ理論で以下のように説明しています。
- 新興国は、自分が国を代表しているという意識を強く持ちやすい
- 高いプレミアムを払ってでも完遂させようとする
社会分類理論
人の認知には限界があるので、何らかの情報を使ってグルーピングして認知する傾向があるそうで、 このグループ分けによって同じグループの人に好印象を持つバイアス、イングループ・バイアスがあるんだそうです。
さらにこのイングループ・バイアスが、ダイバーシティ(多様性)経営の障壁となるよ、という話が併せて紹介されています。
まずダイバーシティには2種類あるよ、という話。
- タスク型の人材多様性
- 知見、能力、経験、価値観などについて、多様な人材が集まる
- 外見に表れにくい
- 組織に対してプラスとなりうる
- デモグラフィー型の人材多様性
- 性別、国籍、年齢などについて、多様な人材が集まる
- 目に見えやすい属性
- プラスにならない、場合によってはマイナスの影響を及ぼす
このような特徴から、ダイバーシティ経営では気をつけないと、安易に目に見えやすい形で分類が行われがちで、 それにより認知バイアスが生まれやすくなるよ、ということが、社会分類理論という認知バイアスとしてグーグルの事例を交えながら触れられています。
認知バイアスの乗り越え方
これがなかなか難しくて、バイアスを解消する手段について体型だった理論や知見が乏しい、と筆者は触れています。
上の社会分類理論のグーグルの例でも挙げられていたのですが、 社内で徹底してバイアスを取り除く研修を行うんだそうで。へー、やっぱそういう愚直な方法しかないんですかねー。
じゃあそんな認知バイアスを解消する方法はないの?というと、まだ理論とは呼べないかもしれないけどこんなのあるよ?として、 アテンション・ベースト・ビュー( Attension-Based View, ABV ) というものが紹介されています。
ざっくりいうと、経営メンバーの多様性が大事だとされていて、要するに同じ視点でたくさん集めるのではなく、 異なる視点の人たちが経営に関わることで、個人が持つ認知バイアスは解消されるのでは?という話ですね。
マインドフルネスの話
章末のコラムに載っていた話なのですが、 マインドフルネス を高めることで、バイアスなく周囲を見通せるようになるかもよ?という話が紹介されてました。
これは個人の範囲で認知バイアスを解消しようぜ、って話ではあるのですが、 コラムで紹介されていますし、経営学のマインドフルネス研究は始まったばかり、ともあるので、 ご自身でコラム読んでみるなり、別の書籍で掘り下げてみるなりしてみるといいんじゃないかと思います。
まとめ
- 認知バイアス、色々ある(個人、組織)
- 認知バイアスの解消に体型だったものは乏しいものの、アテンション・ベースト・ビューやマインドフルネスは使えるかも?
今回のやつは、後半の解消方法に若干乏しい感じがしますね。まあ人間だからしょうがないのかなw
認知バイアスが個人レベルで簡単に解消できるのなら、そう苦労はしないですよね。 とはいえ、認知バイアスにどういったものがあって、同じ状況で「あっこれ認知バイアスが働いているかも!」って気付けるだけでも、 物事を客観的に見られて良いのかもです。
この記事は書かれてから1年以上が経過しており、最新の情報とは異なる可能性があります