読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第28章 社会学ベースの制度理論

前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第27章 ソーシャルキャピタル理論 の続きを読んでいきます。

実際ビジネス上で起きている問題に対して、この書籍に書いてあることを引用しながら、 これはこういう問題なので、こう考えたらいいのでは、ってあたりの引用が出来たらいいなと思うのですが、 ちょっとずつではありますけど、「あっそういえば今のこの話、ここに書いてあった・・・!」みたいなのが出てきました。

まだまだ思考の軸として使えているレベルには程遠いとは思いますけど、 現実問題が実はこういう名前、現象だった、みたいに紐付けができるだけでも、客観的に物事を見ることができてありがたいですね。

今日も1章ずつです。

「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。

『第28章 社会学ベースの制度理論』の概要

第28章はまとめるとこんな感じの内容でした。

  • 制度理論、つまりは組織制度、社会制度、ビジネス慣習などのメカニズムの話 で、社会学ベースと経済学ベースがあるが、経営学で用いられるのは前者の社会学ベースの方
  • 人は埋め込まれたつながり(from エンベッドネス理論)において 合理性よりも正当性で行動する ことがある
    • 何が社会的に正当( レジティマシー )かは国、地域、業界で異なる
    • レジティマシーが通用する範囲、常識の範囲のことを フィールド という
  • アイソモーフィズムはフィールド内の企業が同質化していくプロセス のこと、ステージ1から3で同質化し、常識が形成される
  • アイソモーフィズムを促す3種類の同質化プレッシャー、圧力
    • 強制的圧力 、政策や法律による圧力のこと
    • 模倣的圧力 、みんながやっているから自分も、という圧力
    • 規範的圧力 、先行事例があるとこうすべきという規範になってしまう圧力
  • 異なるフィールド同士では常識が異なるため、レディマシーの衝突が起きる、これを 制度の重複 と呼ぶ
    • レディマシーの衝突にはどう対処すればいいか、重要なもの2つ
      • 非市場戦略 で強制的圧力に働きかける、いわゆるロビー活動とか
      • 既存のフィールド上の制度を破壊する、 インスティチューショナル・アントレプレナー になる

今回は制度の話

前章までは人と人との関係性の話だったんですが、これは一種の社会の話だといえそうです。 一方で今回は制度の話です。言われてみると、制度も社会の話といえばそうですね。

ここでは、組織制度、社会制度、ビジネス慣習などのメカニズムの話を制度理論と呼んでいるようで、 さらに社会学ベースと経済学ベースの話がそれぞれあるようなんですけど、経営学で用いられるのは前者の社会学ベースの方なんだそうで。

つまりは人が合理的な行動をとらないケース、埋め込まれたつながりの話ですね。

埋め込まれたつながりってなんだっけ?ってところで、第24章よりまた引っ張ってきます。

  • 一番浅い関係、 アームス・レングスなつながり
    • 例: 市場取引
    • 合理性、利己性が意思決定の基盤となる
  • そこそこつながった関係、 埋め込まれたつながり
    • 例: 人脈、社会ネットワーク
    • ヒューリスティック、信用が意思決定の基盤となる
  • 一番強い関係、一方通行な関係、 ヒエラルキー上のつながり
    • 例: 企業の制度的な上下関係
    • 合理性、利己性が意思決定の基盤となる

from 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第24章 エンベッドネス理論

ここの真ん中のやつが合理性で動かない、 合理性よりも正当性で行動する というのが今回の話の前提です。

いわゆる「他社がやっているから」「社会的風潮だから」みたいな、心理的メカニズムの話がここから続きます。

アイソモーフィズムによって常識が形成されちゃう

社会的な正当性のことをレディマシー( legitimacy )というらしいのですが、 このレディマシーが通用する範囲、つまりは フィールドにおいて同質化プレッシャーのメカニズムが働き 、 段々と常識が形成されていき、同質化していっちゃうこと、この 同質化プロセスをアイソモーフィズム というそうです。

ステージ1から3まで、3段階あるらしいです。

  • ステージ1
    • 最初は様々なタイプの企業が存在し、利益獲得のために様々な行動を取る
  • ステージ2
    • 特定の「行動」「ビジネス慣習」「仕事の仕方」が多くの企業に採用されていく
    • 多くの企業が採用すると、残りの企業は他社がやっているからといった、正当性だけで選ぶ
  • ステージ3
    • 常識が生まれて、同質化する

フィールドごとに同質化するので、フィールドが異なればその常識も異なってくるよ、というのが、 日本とアメリカのビジネス慣習みたいなのを例に紹介されてます。

日本では新卒は概ね4月採用、初めて会う相手と名刺交換するといったことに対して、 アメリカでは通年採用、名刺交換しないと、いったものも、フィールドで同質化が進んでいった結果だと紹介されています。

アイソモーフィズムを促す3種類の同質化プレッシャーについて

これ、日本人が得意なやつですよねーw

3種類あるようです。

  • 強制的圧力
    • 政策や法律による圧力のこと
    • 例: 政府が言ってるダイバーシティ政策、メリットよく分かってないけど政府が推奨しているからという理由だけで重視しちゃう
  • 模倣的圧力
    • みんながやっているから自分も、という圧力
    • 例: 一時期のノー残業デーのブーム
    • 例: 地方自治体のゆるキャラ
  • 規範的圧力
    • 先行事例があるとこうすべきという規範になってしまう圧力
    • 例: 野球部のウサギ飛びの練習、足腰を鍛えるのに適しているという通念ができてしまう

埋め込まれたつながりにおいては、合理性よりもこういった正当性で動いてしまうケースがあって、 それが上記のような3種類の圧力によってもたらされる、これらの圧力によって同質化プロセスが進んでしまう、ということのようです。

あー、これはなんというかあるあるですねー。 事例を書こうと思えばいくらでも書けそうな気がします。

制度の重複の話

ここでは大きく国という単位のフィールドで、賄賂に寛容な国と厳しい国といった事例が紹介されています。

先進国では賄賂をしないことが空気のような常識である一方、 新興市場では賄賂は空気のような常識となっていて、 それぞれ別のフィールドで生まれた異なる常識なのですが、このあたりがレジティマシーの衝突になっていて、 これを 制度の重複 と呼ぶそうです。

国の例として挙げられていますが、たぶん国単位じゃなくてももっと小さいフィールドでも同様のことはありそうですね。

レディマシーの衝突にはどう対処すればいい?

知りたいのは対処の仕方ですが、筆者からはいまも世界の経営学者によって多くの研究が生み出されている、とあって、 おそらく理論としては固まりきっていない段階なのだろうと思われますが、 それでも筆者視点で2点紹介されています。

  • 非市場戦略 で強制的圧力に働きかける、いわゆるロビー活動とか
  • 既存のフィールド上の制度を破壊する、 インスティチューショナル・アントレプレナー になる

1つは非市場戦略として、いわゆるロビー活動や CSR 活動で、政府に働きかけるといった動きをとる話です。 フェイスブックの事例が紹介されているのですが、どんどん社内に政府・司法分野の人間を取り込んでいってるみたいです。

もう1つが インスティチューショナル・アントレプレナー と呼ばれる変革プレーヤーになることだと紹介されています。

さてさて、長いカタカナワードが出てきましたが、さすがにちょっと掘り下げて見てみないとよく分からないですw

ざっくり言ってしまうと変革者?のような意味合いのワードのようですが、 そもそもアントレプレナー( entrepreneur )が企業家とほぼイコールの意味で良かったですよね。 インスティチューショナル( institutional )は制度・慣習あたりでいいんでしょうか。 これ、直訳すると既存の制度・慣習に対する企業家、みたいな感じですかね?

さてさて、話が少し逸れてしまいましたが、制度の重複にどうやって立ち向かえばいいかについて、 筆者なりの3つの圧力への抗い方、あたりがまとめてあるのでメモ。

  • 強制的圧力 => 政府部門へのアプローチ
    • 例: (NPO法人の)フローレンスが空き物件を活用したおうち保育園、国への働きかけ
  • 規範的圧力 => 様々な啓蒙活動
    • 例: モーニングピッチの例、今となっては大企業とスタートアップ企業が組むのは当たり前だが、昔はそうでなかったため啓蒙活動を行った
  • 模範的圧力 => 仲間・支援者の巻き込みと成功の積み重ね
    • 少しずつ成功を積み重ねることにより、啓蒙にもなる

アイソモーフィズムを促す3種類の同質化プレッシャー、というのは一定研究で明らかになっているのだから、 逆に言えばそうならないように行動すればいいじゃん、というのが事例から見て取れますね。

モーニングピッチの話は以前から少し聞いたことがあったのですが、 最初は運営10人登壇2人の規模だったところから、地道に啓蒙活動されてきたんですね。すごい。

制度理論における、結局とりうる選択肢

最後の最後に3つしかないよ、と書かれています。

  • 常識に従う
  • (非市場戦略のように)常識をうまく活用する
  • (インスティチューショナル・アントレプレナーのように)常識を破壊し、塗り替える

まとめ

  • 同質化の圧力が生まれるメカニズムを理解する、従うか活用するか抗うかは自分次第

規範的圧力や模範的圧力については、地道な活動が必要そうですね。

何も考えない、っていうのが一番あかんと思うので、 同質化の圧力をきちんと把握したうえで、従う方がメリットがあるならそうすればいいし、 抗うことで新たな事業への近道になるならそうすればいいのかな、って印象です。

もし記事内に誤りなどございましたら、 @girigiribauer までご一報いただけると助かります。