前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第7章 取引費用理論(TCE) の続きを読んでいきます。
ゲーム理論は実は学んだことがあって、概ねどういったものかは分かっていたりします。
とはいえ、こうやって経営側からの観点で触れるゲーム理論と、 情報からの観点で触れるゲーム理論とで、異なる視点で同じ理論に触れていくことになるので、 中々面白いんじゃないかなと思ったりしてます。
ちなみにゲーム理論、というワードを初めて聞く方は誤解のないように言っておきますが、 いわゆるテレビゲームやゲームセンターのようなゲームとは異なります。 もっと抽象的な、行動の仕方とか損得勘定とかそういう話を理論化したものですね。
「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。
第8章はまとめるとこんな感じの内容でした。
まずは 生産量 について焦点をあてたゲーム理論の話です。
要するに、A社B社それぞれ、生産量に関して『増産』するか?『現状維持』するか?を意思決定するとしたらどうなるの?、という例です。
(単位: 億ドル) | B社 現状維持 | B社 増産 |
---|---|---|
A社 現状維持 | シナリオ1 A: 15 / B: 15 | シナリオ2 A: 15 / B: 25 |
A社 増産 | シナリオ3 A: 25 / B: 15 | シナリオ4 A: 17 / B: 17 |
(スマホで見づらくなるからあまり表は書きたくないのだが・・・書かずに紹介は難易度高い・・・)
この場合に、A社B社が読みあった結果、どちらも現状維持よりは増産した方が、(相手がどっちを選んだとしても)利益が増えるので、 最終的に定まる結果、 ナッシュ均衡 はシナリオ4のどちらも増産となります。
確かにこの表を見ると、供給超過になったとしても、17億ドルなわけなので、現状維持で15億ドルになるよりもマシになってますね。
確かにこの例で言えば、書籍の方には具体的には書いてはないですが、シナリオ2のB社だけが増産、シナリオ3のA社だけが増産、を交互に繰り返すと、お互いの利益が一番多くなりますね。
まあでも、現実で一言で言ってしまうと談合・・・!(村役場とかで、次はおたくの会社で・・・みたいなやつ)
実際には、生産量の結託は競争法上違反であることが多い、と紹介されてます。
結託をしない前提であれば、上のシナリオ4がナッシュ均衡となってしまいますね。
具体例として半導体業界の例が挙げられていますが、新世代の半導体への投資が行われるたびに供給過剰となり、 値崩れが起きてしまっているにも関わらず、この状況をなんとかできない、ナッシュ均衡で安定してしまっているよ、と紹介されています。
今度は 価格設定 について焦点をあてたゲーム理論の話です。
同じような例で、今度は価格について『現状維持』か?『価格引き下げ』か?の2択の意思決定をするケースです。
(単位: 億ドル) | B社 現状維持 | B社 価格引き下げ |
---|---|---|
A社 現状維持 | シナリオ1 A: 15 / B: 15 | シナリオ2 A: 3 / B: 20 |
A社 価格引き下げ | シナリオ3 A: 20 / B: 5 | シナリオ4 A: 5 / B: 7 |
シナリオ4はいわゆる価格競争ですね。 それぞれ場合分けして考えると、A社もB社も価格を引き下げた方が戦略として合理的となってしまい、 結果的にナッシュ均衡がシナリオ4の顧客の奪い合いとなってしまいます。
このように本来利益率が高いはずの寡占状態で、ベルトラン競争の結果として、完全競争と同じような水準まで利益率が下がってしまうことを ベルトラン・パラドックス と呼ぶそうです。
なるほど。
これたぶんチキンゲームで両方崖から落ちちゃう、みたいなことですかね。 あるいはタカ派とハト派に分かれたときに、タカ同士が争ってしまってお互い深くダメージを受けてしまうみたいな。
ここでは3つあるものの、そのうちの2つを紹介し、残りは次章とされているので、2つ紹介しておきます。
とはいえ、消費者の視点から見ると、もっと携帯電話業界もっと価格競争してくれよ、と思うわけなんですけども。 ベルトラン・パラドックスに陥っていない、ということなんでしょうか?
供給量から見た場合、価格面から見た場合それぞれの視点で見ていくところが、経済っぽさがあるなーと思いました。
この記事は書かれてから1年以上が経過しており、最新の情報とは異なる可能性があります