読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第16章 認知心理学ベースの進化理論

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前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第15章 組織の知識創造理論(SECIモデル) の続きを読んでいきます。

ついこの前、知識の創造に関する前回の章を読んだ後に、たまたまそれを思考の軸として活用する機会があって、 「なるほど、今問題となっているのは暗黙知の共有とか、形式知化できてないとか、そういうことなんだ!」と、 すごく納得することがありました。

その場で解決に至らなかったとしても、 なんというか数学の公式のようなもので、これってこういうことなのね、と客観的に見られるようになるだけでも、 すごく考えやすくなるなあという印象です。

会社に限らず、複数人で何かやるときなどに、こういうマクロ心理学をベースにした経営理論って使えそうだなあと思います。

今日も1章分読んでいきます。 「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。

『第16章 認知心理学ベースの進化理論』の概要

第16章はまとめるとこんな感じの内容でした。

  • 人の認知には限界がある、というのを同じく前提にしつつも、組織の進化( 進化理論 )に焦点を当てた話で、今回は特に ルーティン の話
  • ルーティンとは、 組織のメンバーが同じ行動を繰り返すことで共有する、暗黙知と形式知を土台にした行動プロセスのパターン のこと
  • ルーティンの特性3つ
    • ルーティンは徐々に変化する、 漸進的 な変化に縛られる
    • ルーティンの方向性をいきなり大きく変えることはできない、 経路依存性 を持つ
    • 放っておくと 硬直化 する
  • ルーティンのメリット
    • 業務・行動プロセスが平準化される、目線が揃う
    • 組織に暗黙知を記憶、保存できる(以前出てきた TMS や SMM は形式知の保存が主)
    • 認知に余裕が生まれて、新しい知を探しにいける
  • ルーティンのデメリット
    • 大きく環境変化があったとき、リソースを割り振り直してもルーティンが硬直してしまう
    • そういった場合、 ルーティンをゼロから作り直す 必要あり

ルーティンについて

みんながよく知ってるルーティンの意味と、表層的には同じだよ、とされてますが、 組織・集団によって繰り返される行動パターン である点と、 状況の変化によって変わることもある行動パターン でもあるよ、 とこの2点が特徴として触れられています。

もしかすると後者のやつが、なんとなくイメージしているルーティンとはちょっと違うのかな?という気がしてしまうかもですが、 (個人的な習慣という意味とは少し異なってきますね) 先にルーティンの特性についてみてみます。

ルーティンの特性

ルーティンは進化するのですが、進化する例は後にしつつ、 そもそもルーティンの特性ってどんななの?というのが3つ挙げられてます。

  • ルーティンは徐々に変化する、漸進的な変化に縛られる
  • ルーティンの方向性をいきなり大きく変えることはできない、経路依存性
  • 放っておくと硬直化する

たぶんこの3つがうまい方向に転がればメリットにもなるし、ダメな方に転がればデメリットにもなるよ、という感じじゃないかと思います。

ルーティンをうまく活用している事例

良品計画の事例が紹介されているのですが、良品計画のマニュアルは MUJIGRAM と呼ばれていて、 ここでいう進化理論のルーティン、進化するルーティンを体現している例だよ、とされています。

  • 現場がマニュアルをたえず改訂し続ける
  • 現場と本部がコミュニケーションを取りながら、最低でも月1度は見直される
  • 現場の社員はマニュアルに従いながらも、そのマニュアルに改善点がないかを常に考えながら行動するパターンを日々繰り返す

マニュアルを常に見直す、ということがルーティン化されて、マニュアル自体も形式知として活用されていく、 このように進化のためのルーティンが醸成されているよ、というのが進化理論でいうルーティン、のようです。

https://diamond.jp/articles/-/218448?page=2

この本を出してるダイヤモンド社さんの記事があったのですが、なんかすごいですね・・・。

無印良品の店舗ではどのように商品を陳列すればいいのか、その方法はMUJIGRAMに書いてある。衣類のたたみ方、並べ方などが簡潔な文章と写真で分かりやすく説明されている。

これをただ作っただけでは意味がなくて、ちゃんとアップデートすることを前提としたマニュアル作り、ルーティンになっていることが、 ここの進化理論でいうルーティンのようです。すごい。

ルーティンによってダメになっちゃう例

ルーティンの特性の1つとして、放っておくと硬直化しちゃうよ、というのがありました。 ルーティンの硬直化、またはこれを イナーシア と呼ぶそうです。

どうなるとルーティンが硬直化するかが、いくつか理由を挙げられています。

  • 同じ行動パターンを繰り返す頻度を極度に高めすぎてしまう
  • 一定のペースであまりにも長く繰り返されてしまう
    • イレギュラーな横やりを入れることで防げるかも(チームメンバーの交代や使用機器の変更など)
  • 時間のプレッシャーなどのストレスが組織にかかるとき
    • すぐに結果を出さないといけない、となると、今持ってるルーティンに従うことが効率的と考えがち

なるほどー。

つまりルーティンを硬直化させないためにはこの逆、 適切な頻度で、時にイレギュラーな行動パターンを織り交ぜ、性急に結果を求めない、ことが重要になるよ、と触れてます。

特に最後にはあるあるですかねー。

ビジネス環境の急激な変化の時に、ルーティンは足かせになりうる話

アメリカの新聞業界の例が挙げられていたのですが、 新たに IT 化の波が押し寄せた時に、経営資源(リソース)の割り振りは行ったものの、 ルーティン、仕事の仕方、プロセスはそのまま持ってきてしまったがゆえに、ルーティンが硬直化 してしまって、苦境に陥ったのでは?との見方がされています。

こういう変化の大きいときには、時には ルーティンを全部ゼロから作り直す 覚悟が必要だと紹介されてます。

確かに、こういったルーティンの特性をきちんと把握した上で、適切にルーティンの活用をしていかないと、 状況によっては毒にも薬にもなりそうです。

まとめ

  • ビジネスを進化させたいときに、進化するルーティンは有用
  • ビジネスの急激な変化のときには、ルーティンをゼロから作る覚悟も必要

良品企画の MUJIGRAM の例、いいですね。

そもそもマニュアルは社員やスタッフの行動を制限するためにつくっているのではありません。 むしろ、マニュアルをつくり上げるプロセスが重要で

ここ好きです。 アップデートのプロセスまで含めてのルーティン化、良いですね。

何らか定型的な作業をルーティン化したいと思ったときに、ルーティンの思考の軸として参考にしていければいいなと思います。

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