前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第16章 認知心理学ベースの進化理論 の続きを読んでいきます。
第3部の最後です。
第3部のマクロ心理学と第4部のミクロ心理学で、まとめて心理学のターンのようですが、 どうやら今回までで組織的な視点に立った理論は一旦終了で、次章からは個人の視点に立った理論が色々出てきそうな予感です。
ちなみに『本章は第1部や第2部で紹介してきた様々な理論の知見を総動員することになる』とあって、 やっぱり順番に読んだ方がいいのでは?と思う次第ですw
「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。
第17章はまとめるとこんな感じの内容でした。
上ではシンプルにこんな感じとまとめちゃってますが、 実際の本章では過去の色んな章からの引用で成り立ってます。
主に2つの経営理論から成立してるとあるので、そこだけ。
一言で言うと、 急速に変化するビジネス環境の中で、変化に対応するために内外の様々なリソースを組み合わせ直し続ける、企業固有の能力・ルーティン の総称、だそうです。長いw
まあでもそれが何なのかはだいたい分かります。
第1部の最初の方で、業界構造はそれほど変わらない、変化は大きくない、みたいなのを前提にしてたので、 その辺が実際の問題に適用する際に違和感として出てくるのかもしれないですね。
今回のやつは急激に変化するビジネス環境、というのを前提としてるので、 正直こっちの方がしっくりきます。
なお、ここではまだまだダイナミック・ケイパビリティは経営理論としては未完成ではあるものの、思考の軸として2つ視点を紹介するよ、となってます。
ここでティース型と呼ばれているのは、デイビッド・ティースという方が提示した考え方です。
大きく センシング( sensing ) と サイジング( seizing ) に分かれます。
筆者も触れていますが、けっこう今まで出てきた話に似通ってる感はありますね。
これまでの章で触れてきたカーネギー学派の話、RBVの話やルーティンの話などを取り込むことで、 ティースのダイナミック・ケイパビリティは成立する、経営理論の統合知、とも紹介されています。
IBM の事例、 Amazon の事例、 ANA の事例あたりが紹介されています。 ANA の事例面白かったのでここだけ紹介しておきますね。
ANA が LCC としてピーチを始めるのは共食い以外の何者でもないのに、 どうせ LCC はこれから増えるのだから、やられる前に自分たちでも始めようということで LCC に参入してしまいます。 結果インバウンド需要で大きく伸びたという事例です。
IBM の事例、 Amazon の事例も中々面白いので、興味ある人は実際に読んでみたらいいと思います。
もう1つは、キャスリーン・アイゼンハートという方が提示した考え方です。
前者と比べて、こっちの方が分かりやすさはありますね。
行動規範や優先順位など、意思決定のルールを大枠だけにしておいて、 それだけをルーティン化しておくことで、本質的な部分は足並みを揃えつつも、他の様々な予想外の出来事に柔軟に対応していけるよ、とされてます。
インテルの例やシスコの例が紹介されていますが、 シスコの『買収先企業の従業員は多くても75人まで、うち75%はエンジニアでなければならない』っていうの、すごく分かりやすくいいですね。
やはりアイゼンハート型のシンプル・ルールの方が理解しやすさはありそうな気がします。
変化の激しいこの世の中で戦っていくのはどうすればいいの?って問いには、 一定思考の軸として使えそうな気がします。
理論を知ってからだと『なるほど』と思う面はあるんですけど、 例えばシンプル・ルールってそんな難しいことしてないですもんね。 意識せずにもうすでに普通に活用してるって人も多いはず。
ちなみに僕も、以下の項目をすでにシンプル・ルールとして行動指針にしてたのでした。(もちろん出来ているかどうかは別の話ですけども・・・)
これだって、高次のルーティンだったりしますもんね。
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