読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第36章 グローバル経営と経営理論
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前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第35章 企業ガバナンスと経営理論 の続きを読んでいきます。
前章も前々章もなんですけど、結構会社視点の困りごとみたいなのが続いてきてて、 この第5部はテーマによってはあまり興味がないものが続いたりしますね。
僕ももうしばらく会社組織の話はもういいかなって思っている立ち位置なので、 人事とか企業ガバナンスとかは、必要になってから改めて見ればいいかなと思いながらも、 さらっと把握のために読んでます。
とはいえ全然関係ないかと言われるとそうでもなくて、 例えば今回のグローバル経営ってやつなんかは、一見関係ないと思いつつも、 もうネットでつながってる時代なので、知らず知らずのうちに海外と取引しちゃうことにもなりますし、 あながち他人事ではいられないのかな、とも思ったり。
さて今日も1章分です。
「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。
『第36章 グローバル経営と経営理論』の概要
第36章はまとめるとこんな感じの内容でした。
- グローバル経営と国内経営に本質的なメカニズムの差はない 、既存の理論(の組み合わせ)で説明可能
- 一方で進出のタイミング、進出する国・地域、進出形態については理論的な視点が2つある
- OLI (Ownership, Location, Internalization) パラダイム 、強みの所有と進出国と内部化の3つの優位性を基準に判断
- ウプサラ・モデル 、人の認知には限界があるので、文化や距離など近いところから進出して学習する
- ビジネスにとって本質的に重要なのは、 国境を越える越えないではなく、ビジネス環境に違いがあるかどうか? に尽きる
- 国境とビジネス環境の違いの2軸で考えて、これからの変化に対応できると良さげ
グローバル経営と国内経営に本質的なメカニズムの差はない
とのことでした。シンプル・・・。
グローバル経営には固有の理論が乏しいんだそうで。 逆に言うと既存の理論を当てはめれば十分ともここでは言われています。
進出のタイミング、進出する国・地域、進出形態
これも結局のところ、以下の組み合わせで説明できるよ、と紹介されてます。
- リソース・ベースド・ビュー(RBV) from 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第3章 リソース・ベースド・ビュー (RBV)
- 取引費用理論(TCE) from 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第7章 取引費用理論(TCE)
- 企業行動理論(BTF) from 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第11章 カーネギー学派の企業行動理論(BTF)
確かに似たような話が各章で紹介されてた感じもしますね。
とはいえ、理論的な研究も進んでいて、2つ視点があるので触れておきます。 ちなみにこの2つも、上記理論の組み合わせで説明できるとされています。
OLI (Ownership, Location, Internalization) パラダイム
この3つの優位性を基準に判断するそうです。
- 強みの所有( Ownershop )
- 技術力、ブランド、ノウハウ、経営手法などの強み
- 現地企業と比較してハンディキャップを補うだけの強みがあるか?
- 進出国( Location )
- その強みを活かせる進出国を選ぶべき
- 内部化( Internalization )
- 輸出やライセンシングなど市場ベースの取引ではなく、あえて法人設立するための理由が必要
なるほど、強みについてはリソース・ベースド・ビューの話だったり、 どこまで会社でやるの?については企業行動理論の話だったりするわけですね。
ウプサラ・モデル
人の認知には限界がある、という認知心理学の考え方をベースにしてたりします。 このウプサラ・モデルは企業行動理論をベースにしているんだそうです。
- 自国から文化的・制度的に離れた企業に進出するのはリスクが大きいので、文化・制度・距離が近い国から進出
- 学習し、サーチを広げることで遠い国へ進出する
- 輸出・フランチャイズなどリスクの小さい形態で海外ビジネスを始める
- 学習し、サーチを広げることで現地法人による販売拠点・製造拠点を作る
なるほどー。 ちなみに本章には書いてないんですけど、リアル・オプション的な考え方にも近かったりするんですかね。
国境とは何か?
結局のところ、グローバル経営の議論って、国境をまたぐこととそれに伴うビジネス環境の違いが大きいところをごちゃ混ぜにしちゃってるよ、 みたいな話が紹介されていて、 そもそも国境は人為的に引かれたものにすぎないよ、という話が紹介されています。
つまり、ビジネスにとって本質的に重要なのは、 国境を越える越えないではなく、ビジネス環境に違いがあるかどうか? に尽きる、とのことです。
国境とビジネス環境の違いの2軸で、グローバル経営を分類してる図があったので、 リストでまとめ直してみます。
- 国境を越える x ビジネス環境の違いが大きい(第1象限)
- グローバル経営が暗黙的に仮定していた範囲
- 国境を越える x ビジネス環境の違いが小さい(第2象限)
- (あんまり重視されなかったところ)
- 国境を越えない x ビジネス環境の違いが大きい(第3象限)
- (あんまり重視されなかったところ)
- 国境を越えない x ビジネス環境の違いが小さい(第4象限)
- 国内経営の範囲の話
この中の、国境を越える x ビジネス環境の違いが小さい(第2象限)と、 国境を越えない x ビジネス環境の違いが大きい(第3象限)を重視していなかったのでは?と触れられています。
今後どうなるの?
今後こんな感じに変化していくんじゃない?と紹介されているので、そちらもメモ。
- 国境を越える x ビジネス環境の違いが大きい(第1象限)
- ICT の進展などで、第2象限に移るので、逆に法制度などの違いが目立って見えてくる
- 非市場戦略、大事になってくる
- 国境を越える x ビジネス環境の違いが小さい(第2象限)
- 国境を越えてもビジネス環境が異ならない側面が増える
- ボーン・グローバル企業(一気に国際化するスタートアップ企業)が増える
- 国境を越えない x ビジネス環境の違いが大きい(第3象限)
- 国内でも地域・都市による差が開く
- スタートアップ企業の特定都市への集中
- スパイキー・グローバリゼーションの進展(後述)
- 国境を越えない x ビジネス環境の違いが小さい(第4象限)
なるほどなー。確かに国境を越える=ビジネスのやり方が違う、みたいに混同して考えてたら、 この辺の第2象限、第3象限の考え方って出てこないですね。
ちなみに今後の展望として5つまとめられていたので、上と重複する箇所もあるとは思いますが、これも簡単に箇条書き。
- 国境に縛られないスタートアップ企業の台頭
- 例: ウーバーやエアビーアンドビーが代表格
- 制度の違いのさらなる顕在化
- グローバル化によって解消されない違いが残る
- 多国籍企業の立地戦略の見直し
- 国境の越える人的ネットワーク・コミュニティの台頭
- スパイキー・グローバリゼーションの顕在化
この最後のスパイキー・グローバリゼーションの顕在化って何なんだ?って話なんですが、 要はインターネットが普及した時代だからこそ、ビジネスで勝負を決めるのは都市の企業家コミュニティに入り込んで得られる暗黙知だったりとか、 ここだけの話・・・みたいなインフォーマル情報だったりするよ、という話のようです。
具体的には、例えばシリコンバレーと中国のシンセンのように、都市と都市の間で集中して起きるグローバル化を、 スパイキー・グローバリゼーション と呼ぶそうです。
なるほど、その場にいるからこそ得られる情報が、相対的に大事になってきてるよ、みたいなことなんでしょうか。 確かに国境関係なく、情報格差は大きそうなイメージです。 東京に人がどんどん集まっちゃうのもそれなんでしょうかね?
まとめ
- グローバル経営と国内経営に本質的なメカニズムの差はない
確かに国境って人為的なものなので、それによって必ずしもビジネスの違いが起きるわけではないですもんね。 それこそもうインターネットでは普通につながっちゃってますし。
逆に国境を越えなくてもビジネス環境の違いが大きくなってる、みたいなのは少し目から鱗だったかもです。
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