読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第33章 戦略とイノベーションと経営理論
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前回の 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第32章 レッドクイーン理論 の続きを読んでいきます。
今回から第5部の、ビジネス事象と理論のマトリックス、というターンに入ります。
なんかこの第5部の最初の方に、 ハーバード・ビジネススクールではこんなカテゴリを学ぶけど、そのうち本書ではここを扱うよ、みたいなのが書いてあったので、 ここにもまとめてみます。
- 扱う
- 戦略( Strategy )
- 組織構造(a Organizational Behavior )
- 総合経営( General Management )
- アントレプレナーシップ( Entrepreneurial Management )
- 交渉、組織、市場( Negotiation, Organizations & Markets )
- 技術経営とオペレーション( Technology and Operations Management )
- 扱わない
- 会計学とマネジメント( Accounting and Management )
- ファイナンス( Finance )
- ビジネス、政治、世界経済( Business, Government and the International Economy )
- マーケティング( Marketing )
ほえー、経営って色々あるんですね・・・。
当方、経営に関してはど素人なので、まだピンときてるわけではないですが、 なんとなくここからの章では、この扱う事象にフォーカスした話になっていくのかな?って気がしてます。
またそれなりに過去の章で出てきた理論への参照も増えそうです。
それでは今日も1章ずつ読んでいきますね。 「ここの理解少し間違ってるよ」などあれば、どしどしご指摘いただければと思います。
『第33章 戦略とイノベーションと経営理論』の概要
第33章はまとめるとこんな感じの内容でした。
- 戦略(経営戦略) とは、外部環境の中で業績を向上させるための経営資源を使った、企業の行動・アクションのこと
- 競争戦略 とは、 特定の事業ドメインで企業がライバルに勝つための行動を分析する分野 のこと
- 企業戦略 とは、より高次な視点から、 そもそもどの事業ドメインで戦うか、複数市場で戦うかなどを探究する分野 のこと
- 経営は3つのディシプリンがあってカオスなので、マトリックス(P.616)にまとめて、戦略の何を考えたいときにどの分野を見るべきかを整理して見ると便利
- 例として、競争戦略ならばSCP理論(第1章)、RBV(第3章)、ダイナミック・ケイパビリティ(第17章)、など
- 戦略とイノベーションは別ものと捉えられてきたが、 戦略とイノベーションが不可分 になってきている
- 不確実性の高い世の中において、利益など過去の実績ベースの業績以上に、 どのような将来・未来を世界に対して生み出せるか?という期待感ベース の考え方の方が大事
- つまりは認知心理学からの理論が大事になってくる、イノベーション理論(第12,13章など)やリーダーシップ理論(第18章)、センスメイキング理論(第23章)など
- 一方で独占し利益を出すのも大事、 経済学ディシプリンと心理学ディシプリンのサイクルを内部で循環させる企業 が、今グローバルで強い
経営戦略のカテゴライズと理論に関するマトリックスについて
上の概要ではだいぶ端折りましたが、経営戦略のカテゴライズは以下のような形になっているそうです。
- (経営)戦略
- 戦略コンテンツ … 中身を考える
- 市場戦略 … 市場戦略自体を考える
- 競争戦略 … ライバルに勝ための行動
- 企業戦略 … どの事業ドメインで戦うかなど
- 非市場戦略 … 市場戦略の外側を考える、ロビー活動など
- 市場戦略 … 市場戦略自体を考える
- 戦略プランニング … プロセス自体を考える
- 戦略コンテンツ … 中身を考える
ここにある競争戦略、企業戦略、非市場戦略、戦略プランニングあたりが、次に紹介されているマトリックスの軸として挙げられているのですが、 加えてイノベーション・組織学習という項目も横に1つ追加されてます。
要するにどのような戦略(&イノベーション)を考えたいかによって、どの経営学における理論が使えるよ、みたいなのを表形式でまとめてあるので使ってね!って感じですかね。
この辺は実際に活用する際に自身で見ながら頭を使っていった方がいいでしょうし、 (でかい表はあまり載せたくないし、写真とってここに貼り付けるのも面倒だし) ここに載せるのはやめておきます。ぜひともご自身でどうぞ。
戦略とイノベーションが不可分、という話
ビジネス環境の変化が圧倒的に激しくなってきていて、中々安定した競争優位の状況を作り出せなくなってきている中で、 戦略とイノベーションってそんな違わないんじゃない?むしろイノベーションそのものが戦略なのでは?というふうになってきているそうです。
確かに、新しい知というのは、既存の知と既存の知との掛け合わせで生まれる、的な話が第12章で紹介されてました。
from 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第12章 知の探索・知の深化の理論1
そういう意味では、さっきの経営戦略を考えるマトリックスに、組織学習・イノベーションっていう列が入ってないとおかしいですね。
イノベーションに関する理論は、大部分が認知心理学ディシプリンの話
とはいえ、このイノベーションに関する話って、認知心理学からくるものがほとんどで、 とはいえ経済学や社会学の視点からはあまり多くイノベーションに関しては扱われてないよ、と筆者は触れています。
ここで大手企業に関する時価総額と純利益の2軸で、企業ごとにどこに位置するか?の点グラフが紹介されていたのですが、 中国企業のアリババ、テンセントは、トヨタの純利益が190億ドルだったのに対して、それぞれ40億ドル、10億ドルにすぎないのに、 時価総額ではもうすでにトヨタを上回っている、 競争が質的に変化 してきてるよ、ということをグラフで示しながら紹介しています。
もちろんイーロン・マスクさんの例ももれなく紹介されてたんですけど、 ここまで期待感で煽ってくる競争に変わってきてるの、すごいなって思います・・・。
つまり、不確実性の高い世の中において、利益など過去の実績ベースの業績以上に、 どのような将来・未来を世界に対して生み出せるか?という期待感ベース の考え方の方がこれからは大事であって、 それに必要なのが認知心理学ディシプリンであれこれ紹介されていた、 イノベーション理論(第12,13章など)やリーダーシップ理論(第18章)、センスメイキング理論(第23章)あたりの考え方がものすごく重要になってくるよ、 と紹介されてます。なるほど。
センスメイキング理論なんか、まさにそれですもんね。
from 読書メモ: 世界標準の経営理論 - 第23章 センスメイキング理論
相反する理論(経済学、認知心理学)を高次に内包する企業の話
じゃあ経済学ディシプリンの話は古くて使えないのか?って言われたら、全然そんなことはないよって話も併せて紹介されてます。
一方で独占し利益を出すのも大事なので、 第1章のSCP理論に出てきたような、独占に寄せていくみたいな考え方は大事で、 これを競争の型(第4章)の話でも紹介されていた話でした。
- IO (Industrial Organization) 型
- 独占に近づければ超過利潤が得られる環境
- SCP理論に基づく戦略が向いている
- シュンペーター型
- 見通しが難しい、不確実性が高い環境
- イノベーションに基づく戦略が向いている
ここでアマゾンの例が紹介されているのですが、 ECで独占を築いたあと(SCP理論)、その利益を様々な投資やR&Dに回し(イノベーション)、 新規事業の中から AWS が成功例として台頭し(SCP理論)、みたく内部でこのようなサイクルを循環させる企業が強いよ、と紹介しています。
つまりは 経済学ディシプリンと心理学ディシプリンのサイクルを内部で循環させる企業 こそが強く、 どっちの理論が使えるの?(経済学視点は古くて使えない)って話ではなくて、 両方組み合わせて使い、高次に内包することで強みになるよ、とのことでした。
まとめ
- 戦略とイノベーションは不可分
- 相反する理論(経済学、心理学)を内部で循環させられる企業がこれからは強い
第5部の最初の章を読んでみて、なんとなく分かってきましたよ・・・。 これ、「ここからが筆者のターン」ってやつですね。
今回のような話って、けっこうその3つの経済学、心理学、社会学を横断して見てみないと、 中々話としてしづらい部分なのかなって読んでて思ったんですけど、 まさにその横断してきたからこその話、つまりは筆者のターンなのかなと。 なるほど面白い・・・。
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